チェンナイの車窓から

平日、家に籠もりっきりの日々を過ごす反動か、最近は週末になると彼と一緒に街へと出かけるのが、もっぱらの楽しみになっている。
インドは夫婦一緒に行動するのが基本らしく、日本でいる時みたいに、ちょこっと近くの洋服屋さんに一人で寄ったりすると、ものすごくジロジロと見られたり、男性店員の対応が悪かったり...と、あまり良い心地がしないので結局、「夫婦で行動が一番!」ということを実感する・・・。
私が外国人だからなのかもしれないけれど、未婚らしき女性も含めて街で女性が一人でノビノビと闊歩している光景をみかけることは少ない。そして、女性が単独行動をしている場合は、非常に気を使っている・・・のがこちらにもヒシヒシと伝わってくる。店員とか見知らぬ人に対してかなり強気...というか、なめられないように(軽くみられないように)アメリカのシスター(黒人女性)ばりのアティチュードに似た雰囲気をまとって武装している感じを受けることもたまにある。

スマイリーでおひとよしな日本人の私は、なにもそんなに威圧しなくてもタダなんだから周りを幸せにする笑顔の一つぐらい浮かべればいいのに・・・と思ってしまうけれど、これはインドの貞操観念においてかなりNGらしい。女性は、基本的に、見知らぬ人(特に異性)に笑顔を送ってはいけないし、実際そこまでキツクはないと思うけど、既婚女性は夫以外の男性と二人っきりで話をしてはいけない・・・とか、色々とレギュレーション(規定)があるらしい。うーん、チェンナイだけかな?なんか聞いているだけで頭痛が・・・。女性のふるまい方のガイドブックとかあればいいのに。 あ、ちなみに家事に関しては、先週書店で見つけた「1000 Plus Household Hints」という本を購入し、そろそろ読み始めようとしています。

チェンナイに住み始めた頃は、インドの風景の一部と化しているオートリキシャーを交通手段にしていたけれど、最近はもっぱらレンタカーのお世話になっている。このレンタカー、日本とは違ってドライバー付きで、料金は最低3時間から、車種とエアコンあり・なしといったプランを選ぶことができる。私たちがよく利用しているのは、ファースト・トラック 社という、チェンナイ空港にもカウンターをかまえたタクシー業者。

予約毎に違うドライバーが派遣され、一日が終わって下車する際、それぞれの人間性が浮き彫りに...(溜息)なる。 そして大抵、規定より多め(たまに法外)の値段を請求されるので、その都度交渉してからサヨナラするのがお決まりになっている。
経験から、先ず乗車したときに出発時間とスタート時の走行距離をドライバーに聞いてから発進しないと、一体どこからそんな数字が...? という金額を請求される・・・ことを学んだ。そして、車の中に蚊がいるかもしれないから蚊取り線香代りにお香スティックを持っていくことも・・・。日々、勉強の毎日(笑)... チェンナイには他にも色々とタクシー業者はあるみたいだけど、ま、どこでも一緒だろうというのが今のところの結論。数年内には外国に移動すると言われているので極力、大きな買い物は控えている私たちはしばらくの間、このドライバー達とやりとりする日々が続くと思う。

オートリキシャーでの移動を止めたのは、身体の半分が外気に触れていることと、乗り降りの際、毎回値段交渉をして利用するのがロス(時間的にも精神的にも)という二つの点。排気ガスを浴びて顔が煤黒くなったり喉に不調をきたすことよりも、大渋滞の中、猛スピードで走るのが危ないし怖い・・・というのがより大きな理由かも。。。

インドの道路上で交通ルールは治外法権...なのかな?と思うほど、超猛スピードで割り込み運転や逆走行してくる車が車体の横を通り過ぎていく。今年WHO(世界保健機関)が配信したニュース、インドでは毎日300名の尊い命が路上で奪われている・・・という情報はインドの交通事情を知っている人には大きく頷ける事実なのかも。

なかには幼児を含む一家全員をバイクに乗せて移動する家族も結構いるから、さぞかし危ないだろうなぁ・・・と心が痛む。

そして、同じく心を痛めた実業家が、インドにはいた。
先日プッタパルティに来訪されたラタン・タタ氏

世界一安い車、『タタ・ナノ』を発売した理由を氏は次のように語っている。 「一家4人が1台のバイクで移動する日常風景を見て、手ごろな値段で、雨の中でも安全な移動手段を提供したい」と思った。

金融危機等による原価の高騰により、1ラック(10万ルピー)で発売することは不可能・・・という局面に瀕しても、貧しい人々への約束通り、販売価格をほぼ変えずに販売開始した。

サイババは、タタ氏がパルティに来訪した際、タタ氏をこのように讃えた。「He is a very good man. He has no wife and children and so he considers everyone as his own children. He does lot of service to society. ... 彼はとても善良な人です。妻子がいない分、すべての人々をまるで自分の子のように想っています。そして、多くの社会奉仕に従事しています。」

『タタ・ナノ』の発売をニュースで知ったとき、正直、話題作りのプロモーションだろうな...と思っていたけれど、実際タタ氏の意図は良心の声を実現することにあったことを知って、物事を斜めに捉える私の癖を恥じるとともに、すごいなぁ、という思いで少し胸が熱くなった。インドには良心の声、ヒューマニズムを実現する土壌がたくさん、たくさん、残っている。そして、日本にも。週末の夜、車窓からチェンナイの街を眺めながら、わたしも、志を高く持って人生を歩んでいきたいなぁ...とふと思った。


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