サイババの学生の妻として‐ 服装面 その1.


去年、初めて母がプッタパルティに来訪した時のこと。
インドの民族衣装を一枚も持っていない母に、さすがに洋服じゃいけないから、パンジャビスーツサリーを何着か揃えるようにお願いしたところ、パンジャビスーツを一枚だけ買った母は、「もうショッピングはこれでおしまい」、と言って私を困らせた…。


「お母さん、大のオトナが、毎日毎日、同じ服しか着ないのは変だよ。いくら短期滞在とはいえ、日本ではしないことをインドでするのはよくないよ。」

「私はサーダナ(霊性修行)をしに、サイ・ババに会いに来てるんだから、外見とか服装とか、そんな世俗的なことを気にするのは嫌なのよ。」


「外見を気にする」 = 「煩悩」。
つまり、内面を磨くために聖地まで巡礼に来ているのに、外見を気にするなんて邪道…。
うーん・・・。

日本人はどうも、「巡礼」や「サーダナ(霊性修行)」と聞くと、浮世を捨てて仏の世界に入った人々…剃髪して身に袈裟を纏っただけの修行僧しか思い浮かばないように思える。
・・・という私も、渡印前はなんとなくそう信じて疑わなかった日本人の一人だったので、大きなことはちっとも言えない。

実際、初めてインドに来た際、(現地のインド人さえ手を出さないような...しかし、外国人には人気の)400ルピーぐらいのコットンパンジャビを購入したものの、「聖地巡礼=修行僧らしい簡素な服装」という解釈が正された二回目以降の渡印では、箪笥の肥やしになってしまった。…というよりも、インドの社会常識を知ってしまった以上、恥ずかしくて...、おそらくインドでは小学校低学年ぐらいが着用するチープなパンジャビを着て外には出歩けなくなってしまった。(ちなみに、日本で売っているマキシ寸の可愛いサマードレスは、インドのナイティー<寝巻き>にあたり、どれほどお洒落でも、上に何かを羽織っても、寝巻きであるサマードレスを着て外には出歩けません... 泣。)


私は、彼に助けを求めた。
「一週間近くも滞在するのに、母が、安いパンジャビを一着だけ買うって言うんだけど、どう思う?」
そう・・・。 彼は少し考えて、母にこう伝えるように英語で話した。
「お義母さんは今から、生まれて初めて神様にお会いされるのです。それなのに、無頓着な格好でお会いするのは失礼です。それよりも、きちっとした装いで花嫁のように身を飾り、ご自身を神様に捧げる思いでスワミの御前にお出になった方が良いかと思います。」

元々聡明な母は、瞬時に彼の意図を理解して、年相応の、母の金銭感覚にあった質の良いパンジャビスーツを数着購入することに同意してくれた。


ところで、プッタパルティに来訪する外国人から、「不思議な日本人」と思われている点も、服装に関することらしい。

ある日私は、仲良くなった西洋人から質問を受けた。
彼女の家系は代々サイババの帰依者で、バルヴィカスの頃からパルティに通っているドイツ人。

「前から思っていたのですが、なぜ日本人は、みんなそろってショッピングセンターで売っている中でも最も安い白っぽいパンジャビに身を包み、すっぴんで、ジュエリーもつけずに集団で歩くのですか?日本は経済大国のはずなのに、経済的に貧しいロシアの人々の方が、よっぽどレディー(淑女)らしい身なりをしています。」

その質問を聞いて、思わず笑いが込み上げた。几帳面なドイツ人・・・おそらく、少女の頃から温め続けた、こんな率直な疑問、日本人と仲良くならなければ、聞けなかったに違いない。
それに対して私は、あくまで私見に過ぎないということを念を押して、彼女に返答した。

「うーん、おそらくそれは、日本が昔から質素を重んじる仏教国ということと、現代の生活に宗教が溶け込んでいないことから来ているのだと思います。西洋人は、毎週日曜日には正装して教会に集う習慣があるし、インド人は生まれてすぐに神々に囲まれる生活が待っているから、神様と向き合うことが日常生活に根付いている。日本の場合は、歴史的にも戦争に負けた武士が土地や財産を捨てて仏門に入ったり、戦後には、公立学校で宗教を教えてはいけないっていう決まりができたから、神様とか巡礼に対して独特のイメージを持っているんだと思う。 世を捨てなければ、神への道は歩めない・・・、みたいな。 本当は、人生を歩みながら、神に頂いた人生を謳歌しながら、神と共に歩むことができるんだけどね…。 おそらく、神=出家した修行僧を想像しちゃうから、みんな、外見を気にすることは邪道で、女性の特性である【美しさ】 を排除して、無装飾、無頓着であることが正しい、と信じているんだと思う。」


「ふーん、そうなんだ。なんだか、面白いねぇ。」
そこで、彼女はある時、現地のインド人帰依者に質問をされたエピソードをシェアしてくれた。
「ウエスタナー(西洋人)の、特に若い人達は何故、穴のあいたジーンズや洗い晒したヨレヨレのTシャツを着るの?海外旅行をするお金を持っているんだからもっとちゃんとした身なりをしたらいいのに。インドでは、道端で物乞いしている乞食たちだけが、仕方なくそういった身なりをしています・・・。」
「うーん、」 苦笑しながら彼女は答えたらしい。 「それは、若者の間で流行っているファッションです。」


プッタパルティには様々な価値観を持った人々が世界中から集まるから、面白いっちゃあ、面白い。
「自国の風習」を重んじるのか、「郷に入れば郷に従え」を尊重するのか・・・。この場合、サイババがよく講話で話される、「多様性の中に一体性を見る」というテーマをどう当てはまるのか考えてみるのも楽しいかも...。
私は、国籍は立派な日本人だし、日本人的な価値観を押し通して、「無装飾、無頓着」な身なりを貫くことも、可能。しかし今はインド人の妻であり、スワミの学生の妻らしき装いという規範も付いてくる。


思い返せば、結婚直後の何か月間かは、外出前に彼が必ず、私の「服装チェック」をしてくれていた...。「いやー、さすが新婚でラブラブ」という声が聞こえてきそうだけど、本当に、身につけないといけないアイテムが多過ぎて、いつもどれか一つを忘れていた...。
そこで彼から 「あ、イヤリングしてないよ」とか 「指輪は?」とか、色々とチェックが入り、完了後にやっと外出・・・という日々が続いた。まるで、お父さんと一緒におめかしして外に出かける幼女のようである(恥)。


その、レディーの身嗜みとは・・・

No. アイテム名 詳細
1 ピアス:  敬虔なヒンドゥー女性は、“邪気”が耳から入ってこないよう、寝る時も外さないでいるそうです。私は外出するときのみ、付けます。大きさは、人目を引く鼻のように大きなピアスは避け、小ぶりの、大きくても3−5cm以下のものが好まれます。
2 バングル:  ゴールドバングルの場合は、各腕に1−2本。ガラス製などのものは、各腕に1ダズン(12個)以上、付けるのが定番だそうです(両腕で1ダズンぐらいの人もいます。)
3 トーリング 既婚女性が二番目の足の指につけるリング。結婚式の際にも、新郎が新婦にトーリングを付ける儀式があります。
4 指輪: 結婚指輪の他、ラシリング(占星術の星座強化用)の宝石や装飾宝石を付けます。
5 ネックレス: 結婚式に交わすマンガラスートラの他、信仰する神をモチーフにしたもの、装飾用などをつけます。
6 シンドゥール 既婚女性が額につける赤い粉。額の髪の生え際、 ちょうど分け目の所につけます。一昔前までは、シンドゥールをしていない女性が街で男性と歩いていたら、近所の人がその女性をひっぱたいて親元に連れて行ったとか・・・。国際化が進む最近は、そのようなことはなくなったそうです。
7 ビンディー 女性が眉間の真ん中(第三の目/アジーナチャクラの下あたり)につけるしるし。シールタイプのビンディーがたくさん出ていますが、私の場合、波動が乱れて軽い頭痛を起こすので、眉間にもシンドゥールを付けています。
8 ビブーティ (一般的に販売されているものは)護摩炉で牛の糞を焼成させた神聖灰。こちらも、額の真中につける、お守り。男性の彼も、外出時には、必ず付けて出かけます。
9 爪切り: 手で食事をするインドでは、「爪を切っている」というのは身だしなみの一つとして考えられます。マニキュアをしている既婚女性は多いですが、着け爪ネイルアートをしている人は、まだ見たことがありません。
10 髪形: 「女性は、女性らしく」が基本のインドでは、長髪が好まれます。(日本に一時帰国した際、彼に「これから美容院に行くね」と告げると、「絶対に短くし過ぎないでね」、とリクエストが入りました。ショートの方が、楽なのに...。ちなみに私の髪は背中の真ん中ぐらいまでありますが、インド的に言うとセミロングになるそうで、ロングヘアー、といえば腰下あたりの長さの髪を指すそうです。)髪型は、アップにして一つにまとめるか、一本の三つ編み(お下げにすると女学生スタイル)といったものが定番で、その次に、前髪やサイドを後ろで纏めるスタイルや、ポニーテール(暑いインドではサッパリして気持ちよいのですが、うなじを出してしまうのでインド人でこれをしている女性は少数派)、といったスタイルをよく見かけます。彼によると、最もNGなのは、全く結っていないワンレングス・スタイルで、解いた長い髪というのは夫にだけ見せるもので、他人や目上の人に見せることは、「はしたない」とされてきたそうです(TVの影響か、最近はこの髪型の人を空港でよく見かけます。)
11 カージャル 目を縁取る黒いアイライナーで、バイ菌や強い日差しから目を守るほか、魔よけとしての効用もあるとのこと。小さな乳児もこれをつけています。
12 サリーパンジャビ きちんとした場所を訪問する際は、洋服より、民族衣装がよいみたいです。色は、喪服色である純白、悪の色である黒は敬遠されています。都市部では、パンジャビのサルワール(シャツ)に、ジーンズという着崩しファッションが流行っているので、ちょっとそこまで...という時はOKみたいですが、いずれにせよ、胸の前を覆うドゥパッター(スカーフ)は、必需品、とのことです。

地域によって言語も装いもガラリと異なる多様性の国、インド・・・。
次回は、巡礼地であるプッタパルティで歓迎(暗黙のうちに推奨?)される身だしなみに関してアップしたいと思います。



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