インド式・男女の距離の取り方(後半)


異性と心を通わすこともご法度(特に既婚者)という延長線上で、悩み事の相談や知りたい情報を問い合わせる際、他の人のほうが適任だから・・・という理由で配偶者とは別の異性に話を持ちかけることも奇異な目で見られる要素の一つとされている。なんでもこれは、インド的にいうと一家の品格を貶める行為になるらしい。そういう場合はどうするか? 夫婦で相談し、共通の知り合いである同姓に相談を持ちかけるのが良いらしい。

また、一家の品格を保つ言動の余談として、夫婦は公衆の面前で絶対に配偶者の非を指摘したり、否定してはいけないらしい。インドはプライドが高いお国柄。意見の食い違いが生じた場合は、他人には見えないところでこそっと一言話し合うべきであり、夫婦の不調和を曝け出す行為は断じてNGらしい。

そうして、たとえ照れ隠しであっても、「うちの愚妻が」とか「うちのダメ亭主」なんて言葉を口にすると、言った本人の人間性が、疑われかねない…とのこと。彼は知人に私を紹介する時、こちらが赤面するほど褒めちぎるので恥ずかしく思うことがあるこれど、これに関して私は、彼から学ぶべきところが大いにあると思う。


次なる距離の取り方は、異性と二人っきりになる状況を避けること。
一見、そんなこと当たり前・・・と思っていても、その「二人にならない」レベルが、日印では明らかに違う気がする。例えば、エレベーターに乗ろうとするとき。 異性と二人っきりになりそうな場合は、乗らずに次のエレベーターを待つ。そして顔見知りであっても、行き先が途中までだからリキシャーに乗せてってあげると言われても、「お言葉に甘えて・・・」という風に便乗してはいけない。

例えば私が街で一人で歩いている時、彼の友人に会った時はどう対応すべきかというと、「見なかったふり」が一番無難らしい。婦女たるもの、キョロキョロ周りを見て歩くのは品を下げるとのこと。異性の知り合いにこちらが先に気付いても女性から声をかけては、いけない。
先方から挨拶を交わされた場合は、短く会釈程度の挨拶をし、自分から会話を始めるのを避ける。もし何かを聞かれれば、簡潔に答えてその場を去るのが良しとされている。ただ、夫婦で歩いているときには、話は別。その場合も、知り合いが異性の場合は黙っているか、あくまで配偶者を中心として、会話をつなげる。


とりあえず、周囲の誤解を招く行動を避けることを鉄則としている。日本に住んでいると、「相手が決まっている既婚者」の方がダルマに関してはユルイのかな?と思っていたけれど、実際には、既婚者ほど、戒律が強い。おそらくこれは、夫婦の行動に対して「お家の品格」が問われるからだと思う。なんだか、がんじがらめで窮屈なだけじゃない・・・と思われがちなインドの結婚。でもでもインドでは、結婚していて得することが多い。


その最もたるものは、独身の時よりも社会から丁重に扱われる、という感覚。

独り身だった頃、アシュラムの外を歩いてアパートに向かう道中で、店先の不良インド人から声をかけられたり、にやにやして見られたりとたまに不愉快な場面に遭遇した。完全無視で通り過ぎるものの、せっかくの神聖な雰囲気をぶち壊しにされるようで、低俗な輩に嫌気がさしていた。
そうして、結婚し、額の髪の分け目にシンドゥールをつけて街を歩くようになると、その、「低俗な輩達」でさえ、声をかけるのをピタッと止め、「マダム」という言葉でリスペクトするようになった。私は、「馬鹿につける薬なし」と心の中で押していた軽蔑の烙印を、ちょっと見直した。「へー、礼儀は、知ってるんだ。」

態度の変化の理由を彼に聞くと、「独身女性であれば身寄りがないからある意味、まだ自由。ちゃんと夫がいる既婚女性に声をかけるなんていうのは、社会的に非難の対象になるからね」と一言。

そうなんだ・・・。理由はどうであれ、今は本当に、街を歩きやすい。まるで、額のシンドゥールが私を守ってくれている感じ。インドに於いて既婚女性は、家庭の女神として大切にされ、一家から守られている半面、「義務果たさぬ者に権利なし」と云われているように、色々な制約が付いてくるのだと思う。



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