もし祈りが叶わなかったとき

もし心から祈った願い事が叶わなかったとしても、
それは神様がいなかったからではなく、
その願い事が叶わない方が私が幸せになれることを神様が知っていて、
私のことを守ってくれたのだと気づいた。



ある方のブログを読んでいて、何故か無性にこの言葉が胸に響いた。

願い事がかなわなかった時、「神も仏もあるものか!」と逆ギレして破綻に向かうのか、それとも、与えられたシナリオを、微かな希望と共に淡々とこなしていくのか・・・で、次に用意されるステージが大きく変わるような気がする。


私は、彼の後輩に起こったあるエピソードを思い出した。


日本では今年、新卒の就職率が過去最低記録を更新したというニュースが流れていたけれど、新興国として高い経済成長を遂げているインドでも、厳しい状況は変わらない。

その主な理由は、過剰な人口による競争率の激しさと、欧米諸国の金融危機

特にIT系は、第二次産業や生活インフラが整っていないインド国内の需要が低く、海外へ技術力を輸出する“オフショア開発”が優勢。そして昨今は、仕事の発注元である欧米諸国がくしゃみをしたからインドが風邪をひいている状態らしい。


そんな中、卒業を控えたサティヤサイ大学の学生は、教授や卒業生のアドバイスを得ながら就職試験に備える。例えば、通称エムテックと呼ばれる Master of Technology in Information Technology (M.Tech IT‐情報技術修士)の生徒達のあいだでは、学期終了後のとある週末、(インドでは3月末で学期終了〜夏休み〜6月始業) 『就活ウィークエンド』というイベントが恒例となっている。

あくまで生徒主導で開催されるこのイベントは、バンガロール郊外のサイ・ババの帰依者が経営するホテルを借り、昨年度の卒業生が、就職活動を向かえる在校生の為に時間を割いて集まる。
そして各自の志望職種に合わせた履歴書の最終チェックや面接の動向伝授を行う・・・という内容。これは、就活を経験した先輩から生の声が聞けるのと、企業が新入社員に何を求めているかを具体的に教えてもらえるといった点で、在学生にとっては、かなり為になるらしい。

サイ大学の運営方法には驚かされることが多いけど、こんな風に、大学側から発破を掛けられずとも、自主的に上級生達が後輩の面倒をみる“奉仕”が自然と行われているのがすごいなぁと思う。ちなみに、就職を希望せず、修士課程から博士課程に進学を希望する場合は、どの学位を専攻するにせよ、研究の内容は、『具体的に、弱者、困窮者、孤立無援の人々の生活苦を緩和するプロジェクト』 であることが、最重要視されるとのこと。

彼曰く、上級生の間で毎年交わされるのは、 「僕達の時はちゃんと用意できなかったから、下級生の為には、出来る限りのことをやってみよう」という言葉。昨年彼も、仕事の都合で『就活ウィークエンド』に参加できなかったため、同級生とメールでやりとりしながら、参考書代を仲間内でワリカンして送金したり、下級生が送ってくる履歴書を添削したり・・・と忙しそうにやっていた。

前職でIT部門の人事課に携わっていた私は、そんな彼と一緒に書店を回り、これがいいんじゃない?といった助言を通して間接的に関わっていたため、「下級生の就職が決まった」という話を聞くと、まるで自分の家族のことのように彼と一緒に喜んだ。
そうして、専門技術の強みか、なんと4月中には修士課程を卒業した就職希望者全員の内定が決まった。


ただ一人の生徒を残して・・・。


この生徒は運が悪かったのか、家族の都合で 『就活ウィークエンド』に参加できず、たまたま彼がパルティに行った時、寮にいる後輩たちに配ったITエンジニア向けの面接参考書や、コミュニケーションスキルの奥義書と云われている書籍に目を通す機会を得なかった。

不合格通知を受けながら、次々と級友の就職先が決まって行くニュースを聞いて、一体どんな気持ちだったのだろうと思うと、心が少し痛む。「神様は僕のことをお忘れになったのだろうか?」という寂しい思いが心を過ったかどうかは本人しか知る由もない。けれど、きっと、「早く就職先が決まりますように」、と祈り続けながら日々を過ごしていたのだと思う。


実際、彼のところにも何度か電話がかかってきて、この後輩が手にしそびれた参考書をネットで購入して送ったり、今の会社の人事部に後輩の履歴書を送ったり・・・と労を執る彼に、私は質問した。


「まだ内定決まっていない子、いるんだ?」
「不況でも、専門技術は強いからね。随分前に、ほぼ全員決まったよ。あとは、この子だけなんだよね。」
「・・・なんでその子だけ、就職できないの?」
「彼は特殊な分野(M.Tech IT Optics - 光学情報技術)を専攻したから、就職先が決まりにくいんだよ。不況だから、次世代に向けて人材投資をしようなんていうリスクを負う会社は少ないからね。あと、彼は最近体調を崩していたから、就職できなかった方が良かったのかもしれない。どっちにしろ、僕たちは先輩としてできる範囲で手を差し伸べることしかできない。あとはスワミがなんとかしてくださるよ。」


インドはIT大国だから、さぞかしネット環境が充実しているだろう、と思いきや、一般的に普及しているのは、気が遠くなるほど低速の、ダイヤルアップ接続。

そんな中、光ファイバーなどのブロードバンドに設備投資するのは、ただでさえ不況の最中なのに、コストがかかり過ぎる、とのことらしい。


そうして数か月が過ぎ、IT枠での就職をあきらめかけていた時、彼の元に舞い込んだ話は、バンガロールにあるタタ財閥系の通信企業、タタ通信(TTLS) への就職。


なんと事業内容は、彼が専攻した光学情報技術を生かし、プッタパルティにある、サイババの慈善事業組織・・・セントラルトラスト出版協会サティヤサイ大学、そしてシュリ サティヤ サイ 高度医療機関といった施設にブロードバンドを引くプロジェクト。プッタパルティの立地やプラシャンティニラヤムの組織を熟知しているということで、パルティサイドへの交渉人として新人の彼に白羽の矢が立った。

サティヤサイ大学では、多くの生徒達が、卒業を目前にして「スワミの元を離れたくない。できればパルティに居留まりたい」というジレンマに陥るらしい。そういう観点でも、この後輩に与えられたステージは、望外の結果。「一刻も早く就職したい」という願いは叶わなかったけれど、まさに冒頭に紹介した言葉が現実となったのだと思う。



もし心から祈った願い事が叶わなかったとしても、
それは神様がいなかったからではなく、
その願い事が叶わない方が私が幸せになれることを神様が知っていて、
私のことを守ってくれたのだと気づいた・・・。



「願い事がかなわない」と思える時には、希望を持って、与えられたシナリオを淡々とこなしていけるだけの 心の筋力 が必要なのかも・・・。そうすると、いつかきっと、神様の愛に触れることになるから。


余談ですが、現在プッタパルティのネット環境は以前と比べてかなり整備されていて、モバイルデータカードのTata Photonに至っては、TN州都のチェンナイで使うより、プッタパルティの田舎で使う方が断然早い。
何故か・・・? 
サイババの慈善事業に感動したタタ財閥のラタンタタ氏が、プッタパルティにブロードバンド用の鉄塔を新設したから...。 タタ氏に関する素敵なエピソードはまた別の機会に記事にしたいと思います♪




にほんブログ村 海外生活ブログ インド情報へ

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 倫理・道徳へ

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 菜食・ベジタリアンへ

ブログランキングに参加しています。 応援クリックして頂けますと幸いです。