プレマバンダム − 愛の絆 序編


去年ぐらいから、サイババとサイ大学の卒業生が集う同窓会が何度か開催されている。


『プレマバンダム(Prema Bandham)−愛の絆』 という題名が付いたセレモニーの参加者は、サティヤサイ大学の男子卒業生と両親、配偶者とその子どものみで、兄弟さえNGというとってもプライベートなイベント。

開催に際する手紙をスワミに受け取って頂いてから半年の間、行事の内容を練り、ヴェーダやデヴォーショナルソング、スピーチを捧げてしばしの再会を慈しむ。

参加費は一生徒、3500ルピー(日本円にして約7000円)で、家族用のシルクサリー(TN州の場合、母親はあずき色、妻は濃いピンク色)、滞在中の食事、宿泊、スカーフやバッジに記念品、諸経費が含まれている。

そして2月にはなんと、彼が出席できるプレマバンダムが2回も(2006年の卒業生&タミルナードゥ州在住の卒業生対象) 開催される!
里帰り出産で日本に帰国していた私はこの朗報に、胸を躍らせた。


娘は11月後半生まれだから、ちょうど2カ月過ぎになるころ。
なんとか、娘を連れてインドに行けるかな? 
いくらスワミの学生の妻とはいえ、私なんてただの一帰依者。
こんなチャンス、滅多とない。
それに、「インド脱出」を計画している私達夫婦にとって、この先いつまで、スワミのダルシャンを受け続けられるか分からないという時期に、「どうしても参加したい!」という思いが広がった。


《プレマバンダム − 準備中の様子》 
上: 歌の練習 
中央: プラサードの梱包(家族であってもアシュラム内では男女別々で行動) 
下: ランチ風景(給仕はスワミの学生)



しかし、実際行くとなると、「極寒の日本から常夏のインドの気温の変化に赤ちゃんは耐えられるか?」、「こんな低月齢の赤ちゃんを飛行機に乗せて鼓膜が破裂しないか?」、「清潔な日本から、砂埃が舞い上がるインドに乳児を連れていってもいいものなのか?」、「蚊に刺されてマラリアに感染しないか?」 ・・・考えれば考えるほど、心配事が浮かんできた。

こうなったら先人に聞くべし、と日本に滞在している子持ちのインド人女性や帰依者の方に様子を伺うと、皆揃って「手のかからない低月齢のあいだに行くとラク、50度近くになる猛暑の前にインドに渡った方が良い」という嬉しい返答が返ってきた。

「ま、なんとかなるか。 この世をお創りになった方に会いに行くのに、悪い事が起こるはずないし・・・。」
そういう思いとは裏腹に、「二月上旬に赤ちゃんを連れてインドに行く!」と告げると、初孫を溺愛して止まない私の両親から、猛反対合戦を受けることになった。

「乳児期に飛行機に乗せて鼓膜が破れ、それ以来、耳が聞こえなくなった人がいる」という話が幾度となく会話に上がり、 「行きたい」 「行くなら少なくとも半年後に」という堂々巡りが続いた。

そこで交わされた会話は・・・

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母: 「どうしても行きたいのなら、もう二度と、日本には帰ってこないように!」
私: 「神は地球上にだけ存在して、上空一万メートル以上には存在しないってことはないんよ。スワミはこの世界をお創りになったお方! 至高神に会いに行くのに、悪い事が起こるわけないよ。」

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私: 「なんか今回だけは、神様から呼ばれてる気がするわ・・・。 どうしても行かんとあかん気がする。」
父: 「アホッ!神様カミサマって、冗談も休み休み言え!人間は努力あるのみ。神様は拝む対象じゃなくって感謝する対象じゃ。孫娘を飛行機に乗せるのは少なくても半年過ぎなアカン!」

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私: 「アヴァターに会いに行くのよッ!! もぉー、心配不安は呪いゴト! お願いだから心配してマイナスなエネルギーをばらまくぐらいなら、無事でありますように、って祈って!」
母: 「サイババは、親の言うことを聞きなさいって言われてるようやけど、アンタは全くそれを守ってないじゃない!」

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ホント、双方の立ち位置が全然違うので、全く話がかみ合わない・・・。
私は打ちのめされたような思いで、悶々とした日々を過ごした。
アヴァターに会いに行くのに、身内から妨害を受けるなんて・・・!!


もし、もっと帰依心に溢れる家族なら、即答でOKが出たのだと思う。だけど、いくら家族であっても、帰依心を強制することはできない。自分自身にも言えることだけど、表面的な帰依心はいざとなったらすぐに剥離する。

そして彼から何度か聞いているように、(思いっきり世話になっておきながらこんなことを言うのはなんだけど...ゴメンナサイ) どうやら霊性だけは、遺伝しない」らしい。彼曰く、子どもがスワミの学校に通っていても、その親の霊格が高く、信仰心に溢れているか、というと、決して皆揃ってそうではないし、その逆も多し・・・らしい。


そんなある夜、私は、バンジージャンプのような長ーい空中ブランコに乗っている夢を見た。夢の中だから、何でもあり。ブランコに乗った私は猛スピードで空中をピョンピョンと飛びまわっている。そして、猛スピードで、スワミの前を通り過ぎた・・・。
そこで、夢は終わった。

・・・なるほど。 私は理解した。飛び回るブランコは私の“逸る気持ち”を象徴していて、いくら私が確固たる信念を持って強硬手段で渡印したとしても、不安に駆れて悲しむ両親を残してきたという事実は変わらない。
そんな状況をスワミはお喜びにならないだろう・・・。しかも、今回の目的は、スワミのダルシャンを授かること。プッタパルティに行くのは私の自由だけど、行って、スワミにじっと目を見て頂き、祝福して頂けるかはスワミにかかっている。サイババは、かつてダルシャンに関してこう仰っている ― 「私が目にするものは全て、変容・変質を遂げます。視線を注ぐ全対象が、確実に活性化され、改良されるのです。」 ファーストラインに座ってダルシャン会場でずーっと待っていても、ふとした拍子にスワミが反対側の帰依者の方を向かれたり、手紙に視線を落とされたりすることは何度か経験している。スワミに宛てた手紙と一緒で、書くのは私達の自由。だけど、書いたからって必ず受け取ってもらえるとは限らない…。


私は彼に状況を説明し、泣く泣く、渡印を諦めることにした。


そうすると同じ頃に彼の方にもスワミが夢に出てきて、娘を両手で上下に持ち上げてあやしながら、娘の名前(フルネーム)を何度もお呼びになったそう・・・。

おそらく、「サイ・ババはあらゆるところに遍在する。もし今回参加できなくても、スワミは私達の想いを充分に分かってくださっている。そしていつかきっと娘を祝福する機会を作ってくださるから、焦らなくても大丈夫」というようなメッセージを下さったのかも・・・。

「どうしても行った方が良い気がする!」という沸々と湧き上がる思いは私の熱望であって魂の声ではないのかもしれない・・・。私は気を取り直して渡印の夢を諦め、もうしばらく日本で過ごせるように頭を切り替えた。

「日本では、インドで暮らすような停電や断水に値段交渉といったストレスもないし、実家にいれば、充分過ぎるほど、母に面倒を見てもらえている。日本でも週に一度はセンターで開催されるバジャンに行けるし、娘にとってもこっちの生活の方が良いのかも・・・。」

惜しい気持ちを封印してしまおう・・・と思っていた矢先に、プレマバンダムに出席した彼から、「やっぱり、絶対に出たほうが良い!」とまたもやどんでん返し。

なんでも、卒業して間もない生徒たちが対象だったせいか、配偶者が10人にも満たなかった為、妻子は全員ファーストラインに座らせてもらえた上に参加者全員がパダナマスカールを授かったらしい。



それに・・・ 彼が付けくわえた。
最近スワミは、二日に一度ぐらいしかダルシャンにお出にならない。今後、それが一週間に一度になり、一か月に一度になる日もそう遠くはない・・・。

世界中で不和が勃発し、天変地異が頻発している昨今。過ぎたる欲望によって人類が犯すカルマの代償をスワミが御自身の肉体をもって身代わりされているため、紛争が起こったりする際には身体が麻痺したり酷い状態になり、ダルシャンどころではないらしい。だけど、スワミは御自身をお直しにはならない。何故か?万物の神であるスワミは“人間の肉体”に執着はされていない。そういうことに興味はおありでないから。

地球に降臨する必要性もない至高神は、天界に住む神々や聖者の祈りを聞き入れ、人間の肉体をまとって地球に降臨なさった。「スワミのお身体が良くなってほしい」、「スワミのダルシャンを授かりたい」、と私達人類が願うならば、「スワミが御自身の御力を、御自身の身体を癒す為に使われますように!」といった祈りや、「みんなしあわせになりますように!」という世界の安寧を乞う祈りによってのみ、その願いが成就する・・・何故なら、“祈り”のみが、人間が持つただ唯一の強みであり、神様にとっては、ただ唯一の弱みだから…。


せっかくダルシャンを授かるチャンスを与えて頂いているのに、それを世俗的な迷盲に惑わされて受け取らなかったら、スワミがお隠れになったとき、私はきっと後悔するだろう・・・。

「やっぱり今回は何と言われようとも、絶対に娘を連れて渡印しよう!」
ガーヤトリーマントラを唱えながら、私はそう決意した。



プレマバンダム − 愛の絆 渡航編に続く



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