富と繁栄を司るラクシュミー女神への祈り


ヒンドゥー教徒の間では、女神の日とされている、金曜日。
特に、シュラヴァナ月の満月の夜の前に当たる金曜日は吉兆とされていて、既婚女性(未亡人以外)達は、家庭の繁栄を祈願するため、食事制限をして富を授ける女神、ヴァラ・ラクシュミーに儀式を捧げます。


太古の聖典スカンダ・プラーナには、かつてパールヴァティー女神が、「家庭の繫栄を望む地上の女性達に何かよい儀式を教えてください」と問うた際、シヴァ神が「ヴァラ・ラクシュミー・ヴラタム - “Varalakshmi Vrata”を ラクシュミー女神に捧げなさい」と伝えた件が詳述されているとのこと・・・。


あらゆる種類の富や繁栄そして幸運を司る偉大なる女神、マハー・ラクシュミー。この儀式を行う日は、女性が夜明けとともに起床して食事制限をし、身を清めてから祭壇を整え、八種類の富を司る女神に捧げる讃歌、「アシュタ・ラクシュミー・ストートラム」を吟唱します。


なお、アシュタ・ラクシュミーAshta Lakshmi)女神が授ける富は次の通り。

女神名 Goddess Name 特性・ご利益
1 アーディ・ラクシュミー (マハー・ラクシュミー Adi Lakshmi / Maha Lakshmi ラクシュミー女神の祖先型
2 ダーニャ・ラクシュミー Dhanya Lakshmi 豊穣や穀物を授ける
3 ダイリャ・ラクシュミー (ヴィーラ・ラクシュミー Dhairya Lakshmi / Veera Lakshmi 困難を克服する勇気や精神力を授ける
4 ガジャ・ラクシュミー Gaja Lakshmi 権力や名声、家畜を授ける
5 サンターナラクシュミー Santan Lakshmi: 子宝を授ける
6 ヴィジャヤ・ラクシュミー (ジャヤ・ラクシュミー Vijay Lakshmi/ Jai Lakshmi 勝利や成功を授ける
7 ダナ・ラクシュミー Dhana Lakshmi ゴールドや金銭を授ける
8 ヴィディヤー・ラクシュミー Vidya Lakshmi 知識を授ける


ある時、インド人の知人に多神教のことをどう捉えているかと聞いたところ、「神とは、政府のようなもの。通常英語で“G”odと呼ばれている唯一神は、首相。(もちろん例え話なので厳密的には色々と異なりますが...ニュアンス的には、行政権が内閣に帰属する日本の内閣総理大臣ではなく、直に帰属するアメリカ合衆国の大統領)。その首相の元で仕える“g”ods達は大臣にあたり、管轄別にそれぞれ違う役割が与えられている・・・」という答えが返ってきた。 
・・・なるほど。
それならインド人が、「ある時には、この神様。またある時には、あの神様・・・。」と、祈る対象を変える理由が分かる。一神教を良しとする風土で生まれ育った私には、新しき見解・・・。



さて、授ける富の種類が違えば、武器(小物)や御姿も異なるもの・・・。例えばある男性が、息子、上司、夫、父、と役割や場面によって様々な名前で呼ばれるように、マハーラクシュミー女神も、側面によって様々な名前で呼ばれています。

そして、ラクシュミー女神の八側面を表す御姿は、次の通り。

女神名 御姿
1 アーディ・ラクシュミー (マハー・ラクシュミー 4本腕、蓮色の衣服。蓮と白い旗を持ち、2本の腕で祝福と恩寵を授けるポーズ。
2 ダーニャ・ラクシュミー 8本腕、緑色の衣服。2輪の蓮、鎚矛(こん棒・Mace)、稲草、さとうきび、バナナを持ち、2本の腕で祝福と恩寵を授けるポーズ。
3 ダイリャ・ラクシュミー  (ヴィーラ・ラクシュミー 8本腕、赤色の衣服。チャクラ(Chakra)、ホラ貝(Shankha)、弓矢、剣(Trishula)、金版、祝福と恩寵を授けるポーズ。
4 ガジャ・ラクシュミー 4本腕、蓮色の衣服。2本で蓮を持ち、2本の腕で祝福と恩寵を授けるポーズ。2頭の象が水壺で女神に水を注ぐ。
5 サンターナラクシュミー 6本腕、金色の衣服。マンゴーの葉とココナッツを載せた水壺2杯、剣、盾、膝に乗せた子どもを抱く腕、祝福を授けるポーズ、蓮を持つ子ども。
6 ヴィジャヤ・ラクシュミー (ジャヤ・ラクシュミー 8本腕、紫色の衣服。チャクラ、ホラ貝、剣、盾、蓮、輪なわ、祝福と恩寵を授けるポーズ。
7 ダナ・ラクシュミー 6本腕、赤色の衣服。チャクラ、ホラ貝、マンゴーの葉とココナッツを載せた(もしくはアムリタが入った)水壺(Kalasha)、弓矢、蓮、祝福のポーズから流れ出る金貨。
8 ヴィディヤー・ラクシュミー 4本腕、白色の衣服。2輪の蓮、祝福と恩寵を授けるポーズ。



今年、プッタパルティでは25分間かけて、壇上にてヴァラ・ラクシュミー・ヴラタムの儀式が執り行われたとのこと。 さすが、スワミ。 この形態なら、ダルシャンホールに集まった希望者全員が、参加できます・・・。


本来、マンゴーの葉、ココナッツ、水壺、シンドゥール、ターメリック、サンダルウッドといった粉末と儀式用の赤いマットが必要ですが、我が家では、簡易版。


朝食には、柑橘(タマリンド)系以外のフルーツとホットミルク。

昼食は、金曜日のラフーカーラム(不吉な時間帯)10:30〜12:00、そして15:00から始まるヤマガンダム(死の時間帯)を避けて、1時前後に儀式をはじめ、シュリー・スークタムとラクシュミー・ガーヤトリー・マントラを唱えてから供物とアルティ(献火)を捧げ、食事を摂り始めました。

メニューには、塩、スパイス、粉系はNGということで、麦のでんぷん質が主成分のウプマム(Upma)、牛乳と米粉、砂糖でできたパヤサム(別名、キールKheer)。食事制限終了後には、今日は塩NGなので砂糖味の揚げもの、ヴァダ(Vada)を頂きました。

食事制限というのにこの種類の豊富さ・・・、インドの大らかさを感じます。


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